第六回 選句結果 令和四年四月
句碑へしみいる故郷(ふるさと)の水 佐川智英実
自然と人と時間とが、少しずつ混ざり合っていくような作品だと思いました。(葉子)
立ち話の横をそっとゆく冬 葉 子
知人と出会し暖かい話しをしている中冷たい風が吹く良くない話題か(荻島)
そっとゆく冬の、”そっとゆく”、が、すきです。春になったねと、立ち話の横で、まだいたことが、
バレないように去っていく感じ、冬が「すみません」と言っているようです。(田中)
明かりを消して月が帰ろうとしている 荻島 架人
視点の置所を変えた表現・・・これがすばらしいと思いました。(権代)
月が手を伸ばし照明のヒモをひっぱている様子が浮かんできました。「帰ろうとしている」が上手いですね。(佐川)
月が帰るとき、明かりを消すのは雲でしょうか、明かりを消して帰る月の律儀さも感じました。(田中)
雛壇が無いあの場所に 田中 直心
遠い日のことを思っているのでしょうか、懐かしさも寂しさも感じる句だと思いました(葉子)
貧しいながらも気ままに暮らす 秋山 白兎
貧しさには、いろいろな貧しさがあると思います、もし失礼ながらこの句の貧しさが金銭的なことであれば、気ままに暮らせるゆとりが感じられて、決して貧しくないのではないでしょうか。(田中)
(葉子)
昨日死に今日生まれを繰り返して還暦 権代 祥一
(葉子)
片隅に物言わぬ春の花 荻島 架人
沈黙の春という名著がありましたが、なんか切なさが出ていていいなぁと思いました。(権代)
石積も崩れる21世紀の暴力 権代 祥一
いつの世も暴力は許されません、ましてや国と国との喧嘩沙汰、人間同士の殺し合い、許せないと思っています。(田中)
(葉子)
もう摘みに来たとつくし達 葉 子
もう少し春を感じたいつくしの気持ちだが、人はつくしで春を感じる (荻島)
きっとそう言ってそうだと思わせられる感じが面白いと思いました。(権代)
出て行くぞワクチン済んだ啓蟄の虫 田中 直心
「ワクチン打って三密にダイブだ!」って感じですよね?(権代)
(葉子)
県境いつの日からか立ちつくす猫 佐川智英実
立ち尽くしている猫は、行く場所を決めかねているのか、何かを偵察しているのか、いずれにしても、私たち人間は進まねばならないと思います。(田中)
自分のために生くしか無いね 田中 直心
今までのこともこれからのことも、大切に、一句ずつ書き留めていかれることを願っています。(葉子)
行くが生くになっているんでしょうか? 生きなきゃ行けませんから・・・。(権代)
納得いかないことも、結局は自分のためだったのかと思うとふに落ちます。(佐川)
手相は生まれつき糞握りである 秋山 白兎
糞(握り)と聞くと、不思議と見てみたくなりますね(笑)初めて聞く言葉でした(葉子)
何十年かぶりに糞握りという言葉に触れました。子供の頃、自分は百握りだと自慢する友達を憎々しく思い、糞握りの自分の手相を眺めては、ため息をついたものでした。(佐川)
うぐいすも練習中小春はもう春 権代 祥一
若いうぐいすは泣くのが下手なそうだ。上手に泣ければ誰も待つ暖かい(荻島)
思い出話がすすけた記憶連れて来た 葉 子
思い出話の中で更に一つのエピソードにたどり着いたということですね。私も話をしているうちに忘れていたこと思い出すことがしばしばあります。(秋山)
並んで並んでランドセル 葉 子
体と比べても、大きく見えるようなランドセルを背負い、みんな並んで、学校に行くかわいい景が見えてきます。おはようと挨拶してくれそうです。(田中)
小さい体で背負う大きなランドセル。子供はいつの時代も健気ですね。(佐川)
売り場に並ぶランドセルを想像できるし、黄色い帽子を被った小学生でもいいし、いろいろと想像が広がっていいなぁと思いました。(権代)
ビー玉ごろごろ思考の果てまで 佐川智恵美
ビー玉をころがしながらぼんやりと考え事をしている情景が見えた気がします。(権代)
友は旅立つまだ青い空 佐川智英実
若いのに逝ってしまった友人を青い空で表現されているのでしょうか?残念な状況ですが良い句だと思いました。(権代)
(葉子)
桜が散る小川をまたぐ 権代 祥一
きれいな風景が描かれていると思いました。(秋山)
小川をまたぐ花筏とは使わず、またぐと表現したのは作者の感性はいい(荻島)
とても素直な表現で無駄がなく、余韻の残る良い句ですね。(佐川)
細くても傍に置く影 荻島 架人
難解な句意だと思いました。細い太いは体形でしょうか?傍に置く影は伴侶のことでしょうか?種明かしが楽しみです。(秋山)
細くてもそこに在って、寄り添っている様子が感じられます。(葉子)
つぼみ数えた指先に明日の匂い 葉子
指先で、数えたほどの蕾の数、明日の匂いが好きです。たくさんのこれからの開花を期待しています。(田中)
明日咲いた時の匂いを今感じているという明日にタイムトラベルした想像が表現されていて面白いと思いました。(権代)
丁寧に暮らす様子が感じられ素敵です。天と迷いました(佐川)
つぼみに開花する夢か願い事かその思いが伝わってくる(荻島)
お茶一杯で見える山麓からの絶景 権代 祥一 防府には大平山というさつきの花が美しい山があります。海からの風に吹かれながら持参したコーヒーを飲んだ日のことがありありと浮かんできました。(佐川)
おめでとうが届かず一人で帰る 権代 祥一
あえない悲しさが伝わってくる(荻島)
最近、しりあいから俳句のことを聞かれたのですが、話をしていくと、なんと!ひいおじいさんが俳人で句集を出していた事が、最近になってわかったそうです。すこし前までは、俳句の話しをしてもまったく興味のない様子でしたが、一転してとても誇らしい様子でした。皆さんが何気なく作った句も、数十年後には子孫を励ましているかもしれませんね。 佐川 智英実