自由律句会 幸せます

山頭火の生誕地、防府市発信の句会です

第七回 選句結果 令和四年七月

赤い字は特選として選句

 

 

 

よく耐えた老木の影に寄り添う      佐川智英実

 

はるかな大先輩の息吹を聞くように老大木に触れる感じが伝わります。(権代)

強烈な台風でも通り過ぎたのでしょうか?

老木はそれに耐えました、その影に寄り添いながら作者はご自分を重ねたのではないでしょうか、老木に向かい、「まだまだこれからだよな」と。優しさと強さを感じた句でした。(田中)

寄り添うが作者の優しさを表していて嬉しいです(徳富)

 

 

糟糠の妻が筍湯がく            秋山 白兎

春の恒例でしょうか。湯気と香りと一緒に、記憶に優しく刻まれる句だと思いました。(葉子)

料理は苦手ですが筍のあく抜き作業は大好きです。私も糟糠の妻と言われたい。(佐川)

 

 

 

左に蜘蛛 右にカマキリ 鬼が居座る風景   権代 祥一

我が家も蜘蛛が何匹も同居しています…(徳富)

 

 

ゆっくりでいい ヒバのつぶやき       佐川智英実

ヒバのつぶやきは自分のつぶやきでもある・・・。気持ちをヒバに投影している感じがいいですね。(権代)

枯れて乾いた葉、人生経験の豊富な方が、急ぐなゆっくりでいいよと呟いているような感じがします。

ゆったり、まったり、参りましょうか。(田中)

忘れた頃に誰かに言ってもらいたい一言ですね。(葉子)

 

 

夫亡くし独りの家の広いこと         徳富 ふみ

寡婦となられ寂寞とした情景がよく書けていると思います。(秋山)

心が温まるような、良きお供が現れますように。遠くからですが祈っています。(葉子)

ありありと現在の様子が浮かんできます。飾らずに自分を表現するのは難しい事です。(佐川)

 

 

誰もみな持つ人生に杖       田中 直心

自分の杖は例えばパソコンだったりします。これが無くては人生を歩けないと思います。(権代)

何がその人の支えになっているか、それがあるうちは分からないものだと知った出来事を思い出しました。(葉子)

ほんとうにその通りです。そしてどんなに細くても不格好でも杖があることは幸せですね。(佐川)

 

 

刈り込み過ぎて生垣の皐月が咲かぬ  秋山 白兎

思ったより切りすぎて、、という状況ですね。来年は元気に咲いてくれることを期待します!(葉子)

 

 

鬼の進軍が蟻だったら石を置く    権代 祥一

鬼の進軍がありだったらという発想が奇抜だと思います(秋山)

蟻の行列に石をおく、面白いですね。この句もいいですが、推敲を重ねると凄い句になりそうな伸びしろを感じました。(佐川)

 

 

ふりかえらない燃え続ける蚊取り線香  佐川智英実

蚊取り線香に名を変え、過去を振り返らず懸命に、他人様や家族のために、生きてきた、他に気づかれもせず、目立ったりもせず、人の人生をおもいました、最後は静かに燃え尽きるのに…………..それでいいんですね。(田中)

じりじりとゆっくり灰になっていく様子が、前向きに捉えられていて新鮮でした。(葉子)

 

 

ヒトヒト陽ピカピカ花瓶       田中 直心

カタカナで詠む楽しさを感じました。音が耳と目に残りますね。(葉子)

 

 

義母死にて夫も死にて我一人     徳富 ふみ

お義母様、旦那様を失い、心中お察し申し上げます。「我一人」の言葉の中に、これからはどうしようと言う気持ちが去来していることと思いました。それなのに気丈にも投句をされ、強さを感じます。

たとえ虚勢でも構いません、強く生きてください。でも時には友人なども頼ってください。まだ、貴方の人生はこれからだと思います。(田中)

 

 

ひまわりの灼けたうなじに夕立よ    葉子

強い陽を浴びて、灼けたうなじを、夕立が慰めています。ありがとう夕立ち、でしょうか?

外で働いていて陽に焼け、真っ黒になっていた生前の父を思い出しました。(田中)

うつむくヒマワリの花をささえるところはたしかに首のようですね。ジリジリと灼熱の太陽の音が聞こえてくるようです。(佐川)

酷暑ですから夕立はひまわりも喜びですね(徳富)

夕暮れて雨色かわる駐車場  田中 直心

光と色の強さが感じられて、夕暮れの逆光と雨を思い浮かべました。(葉子)

 

 

帰り待つ野良猫なれど家族なり 徳富 ふみ

家族だと、野良猫の帰りを待っている、作者の優しさが素敵です。帰って来るかの気持ちをどこかに持ちながら。

野良猫は、別の大事なものと置き換えられますね。(田中)

諦めずに待ってくれていることが、待たれる側にとっても幸せかもしれない・・と思えてくる句でした。(葉子)

 

 

石のような言葉噛んで飲む   葉子

石のような言葉とは、味もそっけもない言葉ということなのか?解らないところに一句の魅力がある。(秋山)

不味い酒でしょうか?でもそんな夜もあるかも。(権代)

優しい作者に、だいぶ甘えている人物がいるようですね。そっと吹き出して、水洗トイレに流してしまって下さい。(佐川)

 

 

鬼たちよ 臆病になる勇気を忘れるな 権代 祥一

鬼が何を恐れるかをじっくり考えたくなりました。(葉子)

 

 

父と呑みたい月暖簾        田中 直心

酒は止めてしまったけれど、親父が生きてたら呑んで聞いてみたいことが山ほどあります。この歳になったから聞けることがたくさんあるのに親父はいない・・・。(権代)

月暖簾いいですね、釣りバカ日誌のワンシーンのような温かい句です。(佐川)

 

 

おめかしの妻が姿見はみだしてをる 秋山 白兎

たいへんに微笑ましくて、ほっこりした気持ちになります。奥様を眺める作者の顔も鏡に映っているのではないでしょうか。(佐川)

 どんな年代も愛らしさを添えてくれる、「おめかし」って素敵な言葉ですね。(葉子)