第二回 選句結果 令和三年八月
第二回 自由律句会『幸せます』選句結果 令和三年八月 (赤字は特選)
酔ひ醒めの夜雨を聴く 秋山 白兎 →権代 田中 佐川
素面に戻って雨に気づくというパターン…そんなことが昔あったような…。この感じわかります(権代)
酔いが覚めた、夜の音をどんな気持ちで聴かれたのでしょう?、どんな酔いから醒めたのでしょう?どれ程の酔いだったのでしょう?それ以前に何故お酒を呑まれたのでしょう?色々想像できて楽しめます。そこから物語も生まれそうな気がします。逆に言えば句の中でそれが解ればすごいと思いました。(田中)
楽しい時間のあとの物寂しさは、雨音が優しいからこそ、なおさらです。(佐川)
蛇口の雫の音高く秋雨の夜 松尾 貴史
→田中 雫の音、夜の秋雨との比較でしょうか?「秋雨は、秋の冷たい雨。『秋雨前線』のせいか東日本に比較的よく降る雨『すすき雨』ともいう。と、ある本で学びました」屋外で降る秋雨と比べ蛇口の音が大きく(高く)聴こえたということでしょう、その雫の音に何かを感じていたのですね。(田中)
わが胸の不安打ち消す蝉時雨 徳富 ふみ
→荻島
作者と蝉の声がせつなく伝わってくる(荻島)
雨あがる庭のえくぼに花を置く 荻島 架人 →権代 田中 庭のエクボ・・・この表現が面白く、雨をもらって庭全体が笑顔になっている様を感じました。(権代) 庭のえくぼが気に入りました、きっと奇麗な花がさくんだろうと思います。(田中)
壁の余白にもたれかかる午後 佐川 智英実 →田中 松尾 壁の余白は、日光の当たらなくなった午後の部分、もたれかかる午後、に何かあったのかと声をかけたくなりました。(田中)
かかと折れてスクランブル交差点 荻島 架人
→田中 佐川 踵はヒールの部分それがスクランブル交差点で折れた、スクランブルの真ん中で折れ、周りから衆目の的になり、信号は容赦無く変わりそう、パニック状態です、焦りの感じが句の中にもっと入っていてもいいのかなと思いました。(田中)
→80年代のトレンディドラマの第一話を見ているようです。その時に手を差し出し、黙って去っていった彼との再開がこの後に待っています。(佐川)
こころの綻び繕う術もない 秋山 白兎 →田中 徳富 悲しいことがあり、心に綻びが、それを治せないでいる。私にも治せない心や体の傷を抱えています、直せるけれど治したくない傷もあります、治したくても治せない傷もあります。しかし繕う、治そうという努力は努力は尽くした方がいいと思います。 (田中)
空になるまでラムネひとくち 佐川 智英実
→権代 荻島
ラムネはビー玉が邪魔して一気に飲めないその感じがうまく表現されていると思いました(権代)
すがすがしいラムネの空を思い浮かべる(荻島)
これ以上歯車でいられない日々 松尾 貴史 → 秋山 徳富 梲(うだつ)のあがらないサラリーマンの悲哀でしょうか。しかし、人間は誰しも社会を構成する歯車ではありますね。(秋山)
作者の気持ちがストレートに伝わりますが組織内での苦悩でしょうか?(徳富)
蝉時雨命の限り生きようか 徳富 ふみ
→権代 佐川
短期の命の蝉がたくさん鳴いていることに思いを馳せて、自分も命を全うするまで精一杯生きようとしている姿に感動しました。(権代)
鳴きしきる蝉の声の中、作者の決意を感じます。不安な気持ちと戦いながらも、人に依存しない生き方を模索する姿に心打たれます(佐川)
揺れ動く好きという言葉のすきま 荻島 架人
→権代
好きと言うか言わないかその揺れ動く心の隙間!!この微妙な感じがいいですねー!!(権代)
夜をとどめようとしている星一つ 松尾 貴史
→権代 佐川 最期まで粘って輝き、夜のままいさせようという視点の転換が面白いと感じました。(権代)
一つだけ輝く星、こちらの寂しさも全部わかっているかのようですね。(佐川)
先に咲いて春を待っている 松尾 貴史
→権代
なるほど!!と思って一票!!(権代)
朝湯の髭面をさする 秋山 白兎
→松尾
山のあちらに月がぽっかり 佐川 智英実
→秋山
山も月も平面に見える遠近法を表現しました。嫌みのない句だと思います(秋山)
酒を待つ間の貧乏ゆすり 秋山 白兎
この気持よくわかります!!もうお酒は飲めなくなってしまいましたが、確かにこんな感じでした!!(権代)
草の背高く緑の暑く 田中 美太
→権代 徳富 佐川 松尾 夏を感じさせます。緑が暑い・・・この表現が面白いと思いました。(権代)
→我家の庭の景色みたいで…^^;(徳富)
我が家には自然農に憧れながら、手に負えなくて結局バリカンで刈っている花壇があります。あのイネ科の草を使いこなせる自分になりたい(佐川)
癌を病む夫の余命やわが覚悟 徳富 ふみ →田中 読ましていただき、すごい覚悟だと思いました、私にはとてもできません。しかし覚悟の中に望みを入れてください。諦めないでください。(田中)
二回目も無事に開催することが出来ました事、会員皆様に感謝いたします。
幸せます句会では、過去に結社や句集などに発表された作品もあまり気にせずに、投句していただきたいと思っています。
凄いお知らせです。
会員である秋山白兎さんの句が、なんと!なんと!三省堂の歳時記に掲載されました。こちらは自由律句の発表の場ではありますが、大変な快挙ですのでそちらの佳句をご紹介して第二回句会をしめたいと思います。まだまだ蒸し暑い日が続きますが、皆様ご自愛下さい。
捨てられもせずに生簀の菜種河豚
秋山 白兎
第一回 選句結果 令和三年六月
句の後ろに選者の名前と選評を記載しています。(赤字は特選)
かぼそい蔓に咲く鉄線花の大きさ 秋山白兎
細い茎でも上に伸びようとする蔓の逞しさがうかがえます(荻島)
鳴らないドアと君を待つ 田中美太
俳句で君と云う場合は想い人だと目されるが鳴らないドアと待つのは面白い(秋山)
臨場感が伝わってきます。楽しい時間のはじまりです。(佐川)
イライラドキドキして待っている感じがよく伝わってきます(権代)
ソーダ水に雲を浮かべてカフェの窓 佐川智英実
以前、別の句会で、”雲”は悲しい句などでよく使うのではと、指摘を受けたことがあります、この句の雲はそのイメージを払拭してくれました、カフェの窓には明るい陽射しが差し込んでいますね。(田中)
淡竹の筍は姫皮残して剥く 秋山白兎
昔、大人から習ったことを思い出しているような感覚を表現しているようで面白 いと思いました。単なるノウハウですがそれを教えてくれた昔の人を情報と一緒 に思い出して懐かしむ感じでしょうか。(権代)
沈黙 コロンボがくゆらす煙 佐川智英実
コロンボ警部が事件の確信を考えています。彼がくゆらす煙を、斜め後ろから、そっと見ている、そんな気持ちがしました。(田中)
桐の花咲いた父に七人の姉妹あり 秋山白兎
ああ、そういえば祖母は4人姉妹だったと懐かしい記憶が蘇ってきました。およそ、その倍の女性に挟まれたお父様のご苦労たるや。それでも最後はホロリとさせる上質なドラマを見ているかのようです。(佐川)
五七の桐の紋をイメージしました。格式がある家の長男である父とその姉妹 達・・・という感じ。犬神家の一族みたいなドラマを勝手に想像してしまいました。(権代)
荒れ庭の隅ひっそりと紫陽花咲く ふみ
日頃通りすがりの目にしないけれども紫陽花の色があれた庭にひかっていたのですね。(荻島)
寡黙にひたむきに咲く紫陽花、目を凝らしてみると驚くほど美しい。そんな発見をしたいです。(佐川)
命秘めて泣きつくす七日蝉 荻島架人
天にしようか悩んだ句です。七日蝉という言葉は、目にも耳にも心地いいです。本当に命には限りがあり、どう生きていくのかを問いかけられているかのようです(佐川)
(ふみ)
雨で洗われた街に鯉のぼりがしょんぼり 権代祥一
しわしわの萎んだ鯉のぼりは、淋しすぎます(佐川)
(荻島)(ふみ)
心細さ握る赤い御守 荻島架人
この句が一番好きです。気持ちがストレートに伝わってきます。(ふみ)
受験に望むのか、また合否の発表か、グッと握りしめた赤いお守りに縋る気持ちが伝わります。どうか良い結果がでますように。(田中)
不安な時は神頼みにかぎります!笑(笑)(権代)
透き通る点滴からもらう一日 荻島架人
”透き通る”点滴から、読む人までも元気をもらえそう。一日と言わず、早く元気になって下さい。(田中)
私も何度か入院しているので心境がよくわかります(秋山)
生きている実感をいつもは忘れているのに、病気になって生かされているという感覚を呼び覚ましてくれる気づきがそこにあります(権代)
燕が低く濡れた虫追う 田中美太
どの世界でも生きているものは命の戦いを続けています。(荻島)
情景が目に浮かびます(ふみ)
いい人とコーヒーはいい香り 佐川智英実
両方とも好いということだろう。少し官能的なものを感じます。(秋山)
いい人のマインドがいい香りのコーヒーに似ているという感覚に共感します。でも、自分にとっては香りというよりも味だったりしますが・・・。(権代)
コーヒーのいい香りの中にいい人への気持ちを込めているようです。私もコーヒーが飲みたくなりました。いい人になれるかな?(田中)
軒下の段ボール箱に丸まった猫 ふみ
作者の優しさがダイレクトに伝わります。段ボール箱の四角と、丸まった猫の丸の対比が面白いです。(佐川)
無事に第一回を終えることが出来まして、会員の皆様に対して心より感謝いたします。