第一回 選句結果 令和三年六月
句の後ろに選者の名前と選評を記載しています。(赤字は特選)
かぼそい蔓に咲く鉄線花の大きさ 秋山白兎
細い茎でも上に伸びようとする蔓の逞しさがうかがえます(荻島)
鳴らないドアと君を待つ 田中美太
俳句で君と云う場合は想い人だと目されるが鳴らないドアと待つのは面白い(秋山)
臨場感が伝わってきます。楽しい時間のはじまりです。(佐川)
イライラドキドキして待っている感じがよく伝わってきます(権代)
ソーダ水に雲を浮かべてカフェの窓 佐川智英実
以前、別の句会で、”雲”は悲しい句などでよく使うのではと、指摘を受けたことがあります、この句の雲はそのイメージを払拭してくれました、カフェの窓には明るい陽射しが差し込んでいますね。(田中)
淡竹の筍は姫皮残して剥く 秋山白兎
昔、大人から習ったことを思い出しているような感覚を表現しているようで面白 いと思いました。単なるノウハウですがそれを教えてくれた昔の人を情報と一緒 に思い出して懐かしむ感じでしょうか。(権代)
沈黙 コロンボがくゆらす煙 佐川智英実
コロンボ警部が事件の確信を考えています。彼がくゆらす煙を、斜め後ろから、そっと見ている、そんな気持ちがしました。(田中)
桐の花咲いた父に七人の姉妹あり 秋山白兎
ああ、そういえば祖母は4人姉妹だったと懐かしい記憶が蘇ってきました。およそ、その倍の女性に挟まれたお父様のご苦労たるや。それでも最後はホロリとさせる上質なドラマを見ているかのようです。(佐川)
五七の桐の紋をイメージしました。格式がある家の長男である父とその姉妹 達・・・という感じ。犬神家の一族みたいなドラマを勝手に想像してしまいました。(権代)
荒れ庭の隅ひっそりと紫陽花咲く ふみ
日頃通りすがりの目にしないけれども紫陽花の色があれた庭にひかっていたのですね。(荻島)
寡黙にひたむきに咲く紫陽花、目を凝らしてみると驚くほど美しい。そんな発見をしたいです。(佐川)
命秘めて泣きつくす七日蝉 荻島架人
天にしようか悩んだ句です。七日蝉という言葉は、目にも耳にも心地いいです。本当に命には限りがあり、どう生きていくのかを問いかけられているかのようです(佐川)
(ふみ)
雨で洗われた街に鯉のぼりがしょんぼり 権代祥一
しわしわの萎んだ鯉のぼりは、淋しすぎます(佐川)
(荻島)(ふみ)
心細さ握る赤い御守 荻島架人
この句が一番好きです。気持ちがストレートに伝わってきます。(ふみ)
受験に望むのか、また合否の発表か、グッと握りしめた赤いお守りに縋る気持ちが伝わります。どうか良い結果がでますように。(田中)
不安な時は神頼みにかぎります!笑(笑)(権代)
透き通る点滴からもらう一日 荻島架人
”透き通る”点滴から、読む人までも元気をもらえそう。一日と言わず、早く元気になって下さい。(田中)
私も何度か入院しているので心境がよくわかります(秋山)
生きている実感をいつもは忘れているのに、病気になって生かされているという感覚を呼び覚ましてくれる気づきがそこにあります(権代)
燕が低く濡れた虫追う 田中美太
どの世界でも生きているものは命の戦いを続けています。(荻島)
情景が目に浮かびます(ふみ)
いい人とコーヒーはいい香り 佐川智英実
両方とも好いということだろう。少し官能的なものを感じます。(秋山)
いい人のマインドがいい香りのコーヒーに似ているという感覚に共感します。でも、自分にとっては香りというよりも味だったりしますが・・・。(権代)
コーヒーのいい香りの中にいい人への気持ちを込めているようです。私もコーヒーが飲みたくなりました。いい人になれるかな?(田中)
軒下の段ボール箱に丸まった猫 ふみ
作者の優しさがダイレクトに伝わります。段ボール箱の四角と、丸まった猫の丸の対比が面白いです。(佐川)
無事に第一回を終えることが出来まして、会員の皆様に対して心より感謝いたします。